【源氏物語508 第15帖 蓬生8】盗人すらも外見の貧弱さに素通りをするような悲しい屋敷で 誰とも親しもうとせず 末摘花はひとりぼっちであった。

廚《くりや》の煙が立たないで なお生きた人が住んでいるという悲しい邸《やしき》である。 盗人というようながむしゃらな連中も 外見の貧弱さに愛想《あいそ》をつかせて、 ここだけは素通りにしてやって来なかったから、 こんな野良藪《のらやぶ》のような邸の中で、 寝殿《しんでん》だけは昔通りの飾りつけがしてあっ…