【源氏物語525 第15帖 蓬生25】四月ごろに花散里を訪ねようと二条の院を出た。雨がやんだあとで月が出てきた。青春時代の忍び歩きの思い出される艶な夕月夜であった。

源氏は長くこがれ続けた紫夫人のもとへ 帰りえた満足感が大きくて、 ただの恋人たちの所などへは 足が向かない時期でもあったから、 常陸の宮の女王はまだ生きているだろうか というほどのことは時々心に上らないことはなかったが、 捜し出してやりたいと思うことも、 急ぐことと思われないでいるうちにその年も暮れた。 …