【源氏物語527 第15帖 蓬生27】末摘花の姫君は、父宮の夢を見た。亡き人を恋ふる袂のほどなきに荒れたる軒の雫さへ添ふ。平生にも似ず歌を思ってみたのである。

末摘花の君は物悩ましい初夏の日に、 その昼間うたた寝をした時の夢に父宮を見て、 さめてからも名残《なごり》の思いにとらわれて、 悲しみながら雨の洩《も》って濡れた廂《ひさし》の 室の端のほうを拭《ふ》かせたり 部屋の中を片づけさせたりなどして、 平生にも似ず歌を思ってみたのである。 亡《な》き人を恋ふる袂…