【源氏物語528 第15帖 蓬生28】惟光は荒れた屋敷に入ったが人の気配はない。帰ろうと思ったら月が差し、老女の咳が聞こえた。

惟光は邸の中へはいってあちらこちらと歩いて見て、 人のいる物音の聞こえる所があるかと捜したのであるが、 そんな物はない。 自分の想像どおりにだれもいない、 自分は往《ゆ》き返りにこの邸《やしき》は見るが、 人の住んでいる所とは思われなかったのだからと思って 惟光が足を返そうとする時に、 月が明るくさし出し…