【源氏物語434 第14帖 澪標8】致仕の左大臣も源氏の説得に断りきれず太政大臣となった。この人に栄えの春がやってきたのである。

「私は病気によっていったん職をお返しした人間なのですから、 今日はまして年も老いてしまったし、 そうした重任に当たることなどはだめです」 と大臣は言って引き受けない。 「支那《しな》でも政界の混沌《こんとん》としている時代は 退いて隠者になっている人も治世の君がお決まりになれば、 白髪も恥じずお仕えに出…