【源氏物語585 第18帖 松風9】出立の日の夜明け、秋風が吹き 虫の声をする門出の日、父も娘も忍ぶことができず泣いていた。夜光の珠のような孫娘の姫君との別れを思い 悲しみに暮れる入道。

出立の日の夜明けに、 涼しい秋風が吹いていて、 虫の声もする時、 明石の君は海のほうをながめていた。 入道は後夜《ごや》に起きたままでいて、 鼻をすすりながら仏前の勤めをしていた。 門出の日は縁起を祝って、 不吉なことはだれもいっさい避けようとしているが、 父も娘も忍ぶことができずに泣いていた。 小さい姫君…