【源氏物語591 第18帖 松風15】源氏は、他から耳に入ると気まずいと思って、嵯峨野の御堂にかこつけて 紫の上に明石の君が上京したことを知らせる。

横になっていた尼君が起き上がって言った。 身を変へて 一人帰れる 山里に 聞きしに似たる 松風ぞ吹く 女《むすめ》が言った。 ふるさとに 見し世の友を 恋ひわびて さへづることを 誰《たれ》か分くらん こんなふうにはかながって 暮らしていた数日ののちに、 以前にもまして逢いがたい苦しさを切に感じる源氏は、 人目も…