【源氏物語561 第18帖 松風25】別れ際、明石の上は悲しすぎて すぐに出ようとしない。いざって出てきても 姿は見せないように几帳のかげへ はいるようにしている様子に気品が見える。

姫君が手を前へ伸ばして、 立っている源氏のほうへ行こうとするのを見て、 源氏は膝《ひざ》をかがめてしまった。 「もの思いから解放される日のない私なのだね、 しばらくでも別れているのは苦しい。 奥さんはどこにいるの、 なぜここへ来て別れを惜しんでくれないのだろう、 せめて人心地《ひとごこち》が 出てくるかも…