【源氏物語563 第18帖 松風27】桂の院での饗応に鵜匠たちも呼ばれた。その人達の高いわからぬ会話が聞こえてくるごとに 海岸にいたころの漁夫の声が思い出されるであった。

りっぱな風采の源氏が静かに歩を運ぶかたわらで 先払いの声が高く立てられた。 源氏は車へ頭中将《とうのちゅうじょう》、 兵衛督《ひょうえのかみ》などを陪乗させた。 「つまらない隠れ家を発見されたことはどうも残念だ」 源氏は車中でしきりにこう言っていた。 「昨夜はよい月でございましたから、 嵯峨のお供のできま…