【源氏物語565 第18帖 松風 29】宴にての心付けの品を明石の上に頼む。明石は手元にあった品を持たせてきた。『久方の 光に近き 名のみして 朝夕霧も 晴れぬ山ざと』源氏の勅答の歌である。

清涼殿での音楽よりも、 場所のおもしろさの多く加わったここの管絃楽に 新来の人々は興味を覚えた。また杯が多く巡った。 ここには纏頭《てんとう》にする物が備えてなかったために、 源氏は大井の山荘のほうへ、 「たいそうでないの纏頭品があれば」 と言ってやった。 明石《あかし》は手もとにあった品を取りそろえて持…