【源氏物語570 第19帖 薄雲 1】源氏の冷淡に思われることも地理的に斟酌をしなければならないと自分を納得させていた明石の上。男の心を顕わに見なければならないことは苦痛であろうと彼女は躊躇していた。

冬になって来て川沿いの家にいる人は 心細い思いをすることが多く、 気の落ち着くこともない日の続くのを、源氏も見かねて、 「これではたまらないだろう、 私の言っている近い家へ引っ越す決心をなさい」 と勧めるのであったが、 「宿変へて待つにも見えずなりぬれば つらき所の多くもあるかな」 という歌のように、 恋人…