【源氏物語672 第21帖 乙女27】姫君も目をさましていて、身にしむ思いが胸にあるのか、「雲井の雁もわがごとや」と口ずさんでいた。その様子が少女らしくきわめて可憐であった。

晩餐《ばんさん》が出ても あまり食べずに早く寝てしまったふうは見せながらも、 どうかして恋人に逢おうと思うことで 夢中になっていた若君は、 皆が寝入ったころを見計らって姫君の居間との間の 襖子《からかみ》をあけようとしたが、 平生は別に錠などを掛けることもなかった仕切りが、 今夜はしかと鎖《とざ》されてあ…