【源氏物語680 第21帖 乙女35】霜の白いころに若君は急いで出かけた。泣きはらした目を人に見られることが恥ずかしいのに、大宮にそばに呼ばれるだろう。気楽な場所へ行ってしまいたくなった。

「そらあんなことを言っている。 くれなゐの 涙に深き 袖の色を 浅緑とや いひしをるべき 恥ずかしくてならない」 と言うと、 いろいろに 身のうきほどの 知らるるは いかに染めける 中の衣ぞ と雲井の雁が言ったか言わぬに、 もう大臣が家の中にはいって来たので、 そのまま雲井の雁は立ち上がった。 取り残された見苦し…