【源氏物語683 第21帖 乙女38】舞姫の仮の休息所を 若君はそっとのぞいて見た。苦しそうにして舞い姫はからだを横向きに長くしていた。ちょうど雲井の雁と同じほどの年ごろであった。

大学生の若君は失恋の悲しみに胸が閉じられて、 何にも興味が持てないほど心がめいって、 書物も読む気のしないほどの気分が いくぶん慰められるかもしれぬと、 五節の夜は二条の院に行っていた。 風采《ふうさい》がよくて落ち着いた、 艶《えん》な姿の少年であったから、 若い女房などから憧憬《あこがれ》を持たれてい…