【平家物語84 第4巻 源氏そろえ④】源氏の陣にはかく射よ、平家の者にはこう射よと、互にゆずらぬ弓から放たれる矢は絶え間なく飛び交い、射手のあげる雄叫びは衰えることなく続き、鏑矢のうなりは鳴りひびいて、死闘は三日間続いた。

このころ、熊野別当|湛増《たんぞう》は、 平家の重恩を受けていたが、 どこからこの令旨のことをもれ聞いたのか、 「新宮の十郎義盛は高倉宮の令旨を抱いて、 すでに謀叛を起さんとしている。 那智、新宮の者どもは、 定めし源氏の味方をするであろうが、 この湛増は平家のご恩を山より高く受けている身、 いかで謀叛に…