【私本太平記1第1巻 下天地蔵①〈げてんじぞう〉】🍶まだ除夜の鐘には、少し間がある。とまれ、今年も大晦日《おおつごもり》まで無事に暮れた。だが、あしたからの来る年は。洛中の耳も、大極殿の佇まいも‥

まだ除夜の鐘には、すこし間がある。 とまれ、今年も大晦日《おおつごもり》まで無事に暮れた。 だが、あしたからの来る年は。 洛中の耳も、大極殿《だいごくでん》のたたずまいも、 やがての鐘を、 偉大な予言者の声にでも触《ふ》れるように、 霜白々と、待ち冴えている。 洛内四十八ヵ所の篝屋《かがりや》の火も、 つ…