【私本太平記4第1巻 下天地蔵④〈げてんじぞう〉】🍶🐕「‥おれが抑えていればこそだが、押ッ放したら、われのどこへ噛ぶりつくかも知れぬぞ」「よいとも。もう一度足であやしてやる。放せ」放されたが‥

「……ふ、ふふふふ」 つい、又太郎は、 独り笑いを杯に咽《むせ》ばせてしまった。 と共に、酒に酔った犬飼の手綱《たづな》を抜け、 いつのまにか側へ来て、 自分の足もとを嗅いでいた紀州犬の鼻ヅラを見たので、 いきなり足をあげて蹴飛ばした。 ——それは、まったく彼の意識なき衝動か、 酒興《しゅきょう》の発作ではあ…