【源氏物語688 第21帖 乙女43】源氏は、夕霧の世話を花散里の君に頼む。花散里は、素直な気質で若君を愛して大切に世話をする。夕霧は、こうした優しい人と夫婦になりえたら幸福であろうと思った。

若君は雲井の雁へ手紙を送ることもできなかった。 二つの恋をしているが、 一つの重いほうのことばかりが心にかかって、 時間がたてばたつほど恋しくなって、 目の前を去らない面影の主に、 もう一度逢うということもできぬかとばかり 歎《なげ》かれるのである。 祖母の宮のお邸《やしき》へ行くことも わけなしに悲しく…