【源氏物語690 第21帖 乙女45】夕霧の若君が、涙の流れるのを 紛らしている様子のかわいそうなのを御覧になって、 宮はほろほろと涙をこぼしてお泣きになった。

「男性というものは、どんな低い身分の人だって、 心持ちだけは高く持つものです。 あまりめいったそうしたふうは見せないようになさいよ。 あなたがそんなに 思い込むほどの価値のあるものはないではないか」 「それは別にないのですが、 六位だと人が軽蔑《けいべつ》をしますから、 それはしばらくの間のことだとは知っ…