【平家物語91 第4巻 競①〈きおう〉】三位入道の嫡子 伊豆守仲綱《いずのかみなかつな》は木《こ》の下《した》と名づけられた鹿毛《かげ》の名馬を持っていた。これを知って欲しがったのが宗盛である。

高倉宮が法輪院で休まれている頃、 京の街は宮の謀叛《むほん》の噂でもちきっていた。 戦乱はもはや免れまい、 あわてて逃げ仕度にかかる者さえいた。 と共に一体何が宮を 謀叛に走らせたのかというせんさくが囁き交された。 黒幕とも目される源三位頼政の名が、 人々の口に上ったのもこの時である。 高倉宮謀叛の知らせ…