【平家物語92 第4巻 競②〈きおう〉】「噂にたがわぬ名馬じゃ。馬は良い、だが持主の惜しみ方が憎い。それならば仲綱めが心を慰めてくれよう、やつの名を馬に印しるせよ」仲綱の焼印を押された。

「噂にたがわぬ名馬じゃ。馬は良い、 だが持主の惜しみ方が憎い。 それならば仲綱めが心を慰めてくれよう、 やつの名を馬に印《しる》せよ」 仲綱の焼印を押された「木の下」は こうして宗盛の厩に収まったが、 伝え聞いた客たちが訪れて、一目名馬をと所望すると、 薄笑いを浮べた宗盛は馬をひかせると怒鳴った。 「仲綱…