【平家物語94 第4巻 競④〈きおう〉】驚いた番人が飛びこんで宗盛に報告する。半信半疑の宗盛がかけつければ、間違いなく南鐐である。しかし尾の毛は切られ、「昔は南鐐、今は平宗盛入道」と焼印が押してある。

この頃、三井寺にあって合戦準備に懸命であった渡辺党は 寄り集って競の噂をしていた。 一人でも手勢が欲しい時、競の不参は打撃である。 それに同族である。 渡辺党の一人が頼政に近づくと思い切って申し立てた。 「競は殿もご承知の武勇のもの、何んとかして、 あの競を召しつれてくるべきでした」 頼政は不安気な渡辺一…