【私本太平記21 第1巻 大きな御手13】新帝後醍醐の徳を、彼は称える。飢饉には、供御の物も減ぜられ、吏を督して、米価や酒の値上りを正し、施粥小屋数十ヵ所を辻々に設けて、飢民を救わせ給うたとも説く。

「——いま汝らの怨《えん》じた上の者とは、 みな武家であろうがの。 よいか、守護、地頭、その余の役人、 武家ならざるはない今の天下ぞ。 ——その上にもいて、 賄賂取りの大曲者《おおくせもの》はそも誰と思うか。 聞けよ皆の者」 彼の演舌は、若雑輩のみが目標ではなさそうな眸だった。 「それなん鎌倉の執権高時の内管…