【私本太平記26 第1巻 ばさら大名①】春風に嬲らせていく面構えのどこかには「…ままよ」といった風な地蔵あばたの太々しさが、いつも多少の笑みを伴っている。そしてもっと大きな視野へその眉は向っていた。

騎旅《きりょ》は、はかどった。 丹波を去ったのは、先おととい。 ゆうべは近江《おうみ》愛知川《えちがわ》ノ宿《しゅく》だった。 そして今日も、春の日長にかけて行けば、 美濃との境、磨針峠《すりばりとうげ》の上ぐらいまでは、 脚をのばせぬこともないと、 馬上、舂《うすず》きかける陽に思う。 「おううい、おお…