【私本太平記29 第1巻 ばさら大名④】頬うるわしく唇紅く、小鼻のわきの黒子に好色的ないやらしさが気づかれるほかは、いかにも守護大名らしい恰幅の重さと、どこやらに狡さをかくした微笑までそなえている。

「さすが花奢《かしゃ》だな、右馬介」 「おなじ守護大名ながら、 下野国の御家風と、ここの佐々木屋形では」 「まさに、月とすっぽん」 ——翌朝、起き出てみると、 総曲輪《そうぐるわ》は砦《とりで》づくりらしいが、 内の殿楼、庭園の数寄《すき》など、 夜前の瞠目《どうもく》以上だった。 遠くの高欄《こうらん》を…