【私本太平記33 第1巻 ばさら大名⑧】「事、洩れては一大事。かつはおそれ多い。高氏どの、誓ッて御他言なきように」のどの辺を出きれぬ小声や、そのわななきざまを見ると、高氏はかえって、冷静になった。

「この道誉とて、鎌倉の恩寵をうけた一人、 なにも世変《せいへん》を好むものではないが、 かなしいかな、天運循環の時いたるか、 北条殿の世もはや末かと見すかさるる。 高時公御一代と申しあげたいが、ここ数年も、こころもとない」 道誉の眸は、高氏の眸をとらえて、離さない。 横にはまた、息をつめて、 彼の顔いろを…