紫式部集 69 70

渡殿の戸口の局に見出だせば、ほのうち霧りたる朝の露もまだ落ちぬに、殿歩かせ給うて、御隨身召して、遣水払はせ給ふ。 橋の南なる女郎花のいみじう盛りなるを、一枝折らせ給うて、几帳の上よりさし覗かせたまへる御さまの、いと恥づかしげなるに、我が朝顏の思ひ知らるれば、 「これ、遅くては悪ろからむ」とのたまはす…