海に手紙を出すならば

 わたしがあの人の音楽を弾くようになって、それなりが経った。 うまくなった気はしない。よいものかもわからない。ただ手応えのないまま闇雲にめったやたらに続け続けて。「月にむかってどこまでも飛ぶ虫みたいだな」 いつも、そう思う。 手紙を書きたかった。 聞きたいことは溢れんばかりにある。 あの曲のコード…