イソップの太陽(創作掌編)

30年も前のことだけれど、ありありと覚えている。 古びたオフィスビルが立ち並ぶ街角、道路をはさんで向かいあっている2棟のビル。共に7階建てで、片方が灰色、もう片方は煉瓦色だった。 私が数ヶ月のあいだ夜間の警備員をしていたのは、灰色のビルのほうだ。 学生時代の仲間と起業したアイデア商品の会社が倒産し、心…