「一瞬の望見」(3)

tooth-o.hatenablog.com たとえば生と死は、そのいずれかをえらぶことのできる二つの事柄ではなくなった。 幼時、病上がりの日に、自由学園校舎裏で、老齢のロバの脚元にしゃがんでいた。そうしてかくれ、心に刺の声を聴きながら、子供には由々しい背徳の時を、私は丹念に潰した。その悦びを、私はえらんだ。ニ十歳ちかく…