美しい反例

若い数学者が、壇上へと静かに足を運んでいく。 「だれだあいつは」という声が、どこからともなく聞こえた気がした。 彼は壇上へ上がると、一呼吸置いて自分のノートを開いた。まだ一言も発していない。 彼は自分の名前さえ名乗らないままに、ゆっくりと、しかし力強く、黒板に数式を1つ書きはじめた。 会場が一瞬どよめ…