帚木の帖 十二 ゲンジの君、空蝉を夜這う

(現代語訳) ゲンジの君は切なくて眠れない。寂しい独り寝は目が冴えるばかりだ。北側の紙の扉の向こうに人の気配がする。「もしかして、あの姫君がいるのだろうか?」と甘い気持ちもあって立ち上がった。全神経を集中して立ち聞きしていると、紀伊のカミが話した弟君の声がするのだった。 「お姉さま。どこにいるの」 震…