空蝉の帖 一 ゲンジの君、煩悶す

(現代語訳) ゲンジの君は寝付けない。 「ここまで女にコケにされたのは初めてだ。今夜は恋愛の厳しさを知ったよ。死にたくなっちゃった」 とぼやくので、弟も泣けてきた。その様子がとても可愛い。ゲンジの君は、弟を手探って撫でてやる。小さく華奢な体と、それほど長くなかった髪の毛、気配までもが空蝉を思い出させる…