夕顔の帖 三 伊予に下る空蝉、心乱れるゲンジの君

(現代語訳) ゲンジの君は、あの空蝉の異常なまでの冷たさを、この世の女ではないように思っていた。無抵抗な女ならば、忸怩たる火遊びをしてしまったと諦めることもできただろう。ゲンジの君は「このまま引き下がれるわけはない」と負け惜しみから、空蝉を想い出さずにはいられなかった。空蝉ごときに心を奪われるような…