夕顔の帖 六 ゲンジの君、十五夜に夕顔を連れ去る

(現代語訳) 十五夜の満月の光が隙間だらけの屋根からこぼれ落ち、ゲンジの君には見慣れない住居の様子が珍しくて仕方なかった。やがて夜明け近くになると、隣の家々から目を覚ました貧乏人の声がする。 「ああ、寒い。今年は商売あがったりだ。このままじゃ田舎へ帰ることもままならねえ。おい、お隣さん聞いてるか」 な…