若紫の帖 六 尼君、ゲンジの若紫を托して他界する

(現代語訳) あの山寺の尼君は、病が小康状態なので戻っていた。都の家へゲンジの君は、時々手紙を送った。当然、返事は毎回、同じ内容が記されている。だが、いつもより波瀾万丈だったここ数ヶ月は、他のことに手を付けている暇もなく流れていった。秋が終わる頃になり、ゲンジの君は、意味もなく寂しくなって、溜息ばか…