末摘花の帖 一 十六夜の琴

(現代語訳) ゲンジの君は、何度思い出してもあの夕顔の露のように儚く逝った人を忘れられない。年月を経ても悲しく思った。どこを見渡しても気取った面倒な女たちが、互いに牽制し合っているだけなのである。あの無邪気な夕顔を、懐かしく、かけがえのない人だったと思うのだった。 そういうわけで、ゲンジの君は「なん…