浮雲 林芙美子 著

読んでいる最中も読んだ後も色とりどりの感情がうごめく。この臨場感はなんだろう。「帰りさへすればいゝンだわ」「友達を紹介して行つてくれたンだけどさア」のような、セリフ内の「ン」の使いかたが絶妙で、主人公の「はすっぱ」な性質が逐一如実に描かれる。この「ン」は男性が使う場面では気安さや見栄の色を見せる。…