伊藤計劃『ハーモニー』考察|理性が支配する未来における幸福の在り方

夭逝の天才が遺した予言 伊藤計劃という名を知らない読者も少なくないだろう。二〇〇九年、三十四歳という若さで世を去った作家である。しかし彼が遺した三つの長編——『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』(円城塔との共著)——は、日本SFの地平を一変させたと言って過言ではない。特に『ハーモニー』は、その死の直前…