御坊日誌②

御坊に行き着いたのは、偶然ではない。 私は、海を求めていた。全てを隠し、全てを受け入れる海を。西御坊で電車を降りた私は、ひたすらに南西へ、海の見える丘へ、リズムを緩めることなく歩き続けた。すれ違う者はだれ一人としていない。好都合だ。 私はここで過去を断ち切らなければならない。厚い雲に覆われた空に呼応…