不審庵 (太宰 治)

 拝啓。暑中の御見舞いを兼ね、いささか老生日頃の愚衷など可申述(もうしのぶべく)候(そうろう)。老生すこしく思うところ有之(これあり)、近来ふたたび茶道の稽古にふけり居り候。ふたたび、とは、唐突にして…