薄明 (太宰 治)

 東京の三鷹(みたか)の住居を爆弾でこわされたので、妻の里の甲府(こうふ)へ、一家は移住した。甲府の妻の実家には、妻の妹がひとりで住んでいたのである。 昭和二十年の四月上旬であった。聯合機(れんごうき…