花火 (太宰 治)
昭和のはじめ、東京の一家庭に起った異常な事件である。四谷(よつや)区某町某番地に、鶴見仙之助というやや高名の洋画家がいた。その頃すでに五十歳を越えていた。東京の医者の子であったが、若い頃フランスに渡…