おさん (太宰 治)

        一 たましいの、抜けたひとのように、足音も無く玄関から出て行きます。私はお勝手で夕食の後仕末(あとしまつ)をしながら、すっとその気配を背中に感じ、お皿を取落すほど淋(さび)しく、思わず…