コーヒー哲学序説 (寺田 寅彦)

 八九歳のころ医者の命令で始めて牛乳というものを飲まされた。当時まだ牛乳は少なくとも大衆一般の嗜好品(しこうひん)でもなく、常用栄養品でもなく、主として病弱な人間の薬用品であったように見える。そうして…