木曽の旅人 (岡本 綺堂)
一 T君は語る。 そのころの軽井沢は寂(さび)れ切っていましたよ。それは明治二十四年の秋で、あの辺も衰微の絶頂であったらしい。なにしろ昔の中仙道の宿場(しゅくば)がすっかり寂れてしまって、土…