妙な話 (芥川 竜之介)

 ある冬の夜(よ)、私(わたし)は旧友の村上(むらかみ)と一しょに、銀座(ぎんざ)通りを歩いていた。「この間千枝子(ちえこ)から手紙が来たっけ。君にもよろしくと云う事だった。」 村上はふと思い出したよ…