臘梅 (芥川 竜之介)

 わが裏庭の垣のほとりに一株の臘梅(らふばい)あり。ことしも亦(また)筑波(つくば)おろしの寒きに琥珀(こはく)に似たる数朶(すうだ)の花をつづりぬ。こは本所(ほんじよ)なるわが家(や)にありしを田端…