D坂の殺人事件 (江戸川 乱歩)

(上)事実 それは九月初旬のある蒸し暑い晩のことであった。私は、D坂の大通りの中程にある、白梅軒(はくばいけん)という、行きつけのカフェで、冷しコーヒーを啜(すす)っていた。当時私は、学校を出たばかり…