いしが奢る (山本 周五郎)

一 六月中旬のある日、まだ降り惜しんでいる梅雨のなかを、本信保馬が江戸から到着した。 保馬は江戸邸の次席家老の子で、その名は国許(くにもと)でもかなりまえから知られていた。俊才で美男で、学問も群を抜い…